カラ回り 第296夜

皇子12神の一人。
光速のアンソニー。

第294夜に登場した男だ。

女子にとってアンソニーの第一印象はけっしていいものではない。
皇子の回りには
モデルかと思うような男たちがいたり、
ホストでもやっていけそうなトークレベルの男がいたり、
女子の気持ちを理解にこれでもかと寄り添える男がいたりと、
男の色気に溢れた猛者たちが多数集っている。

その中において
アンソニーは非常に珍しいタイプだ。
けっして見た目で売っている男ではない。
よく言えば、ちんちくりん。

身長も低く、太っている訳では無いが、シルエットだとふくよかという表現が一番しっくり来る。
多少筋肉質ではあるが、お腹も比例してぽっこり出ている。

だが、彼の魅力は外見ではない。
皇子の周りにいる数百のモテ男たちが居並ぶなか、そのトップオブトップである、皇子12神には、ただのちんちくりんでは絶対に選ばれない。

要は、アンソニーはトップクラスにモテる、ということだ。
彼には常人には理解しがたい、能力がある。

今宵は一体どんな能力を持っているのか、そしてなぜそんな彼が女子の心を捉えて離さないのか、紐解いてみようと思う。

アンソニーとは皇子が大学時代に知り合った。
当時、彼は皇子と同じく全くモテなかった。

そのためよく皇子の一人暮らしのマンションに集ってはどうやったら女子と仲良くなれるのか密談をしていたものだ。
彼は非常に酒を愛し、酒にも愛される男。
二人で紡ぐ女子ウケ談義はいつしか酒をいかに飲むかという話にすり替わり、結果、なんの話もまとまらず気がついたらヘベレケ。
なにも残らない朝を迎えるのだ。

こうやって不毛なひとときを送っていた我々は、このままではいけないと気づくことになった。

アンソニーはここで驚く行動に出る。
見た目を如何に鍛えるか、
ということを早々に放棄したのだ。

彼は突破口を、心理学に見出した。
女子の心を支配すれば、見た目などどうでもいいということらしい。

皇子はといえば、そんなアンソニーを尻目に
如何にモテる見た目や雰囲気を築きあげるかということに終止していた。

アンソニーは
フロイト、ユング、アドラー、ゲシュタルトなどの心理学における巨人たちの書物を読破していく。
その他、行動心理学、女性心理学の書籍にも手を伸ばした。

大学の心理学部の学生でもそこまで勉強しないだろうと思うほど、彼は心理学に傾倒し、幾年月が流れ(といっても3ヶ月位)、そして精神と時の部屋から出てきた。

心理学を身に着けたあとの彼は
恐ろしいまでの力を発揮するようになった。

ある日、みんなの集いにアンソニーが女子を一人連れてきた。
先日、ナンパした女子で今日初めて会うらしい。

見た感じ、かなりのギャルで
金髪に近い髪色、浅黒く焼けた肌、そして抜群のスタイル。
その場にいた全員が色めき立った。

その集いには
他にも数名の皇子12神のメンバーもおり、顔面偏差値も総じて非常に高い。

しばし、皆でとりとめのない会話をしていたのだが、その中の一人がアンソニー対して残酷とも言える質問をその女子に投げかけた。

「ねえ、この中で付き合うとしたら誰がいい?」
「順位決めてよ」
これ、自分がモテる、上位にランキングすると思い込んでいる男がよくやるやつだよね。

女子も案外、これに乗り、
ランキングが開始する。

まず1位。
先程からクールに決めている、皇子12神、渋谷のマーク。

そして2位
そのランキングを提案した男、ケンジ。

どんどんランキングが進む。
途中、良くも悪くもない、ネタにもならず残念でもない順位に皇子がエントリーされ、最後、アンソニー。

え、これ地獄じゃん。

自分が頑張ってナンパした女子が自分以外の男がいいと言いだして、
さらにここにいる男たちの中で最下位とか。

皇子なら、泣きながらその場を後にして
おそらく4日ほど放浪の旅に出るであろう、その仕打ちに対して、アンソニーは特に意に介している風もない。

彼はすでに一切見た目で勝負しようとしていない。
会ったばかりの異性のランキングなど、見た目がタイプかどうかだけで総合点では当然ない。
彼をそれを見切っていたのだ。

そして、アンソニーは
「まあまあ。俺等とりあえず晩飯でも食いに行ってくるわ」と言い残し、いまだイケメンたちの園に未練を残している女子を引きずり、去っていった。

その出来事から2日後。
皇子はアンソニーと会う機会があった。

隣には、こないだアンソニーをランキング最下位に貶めた派手目ギャル。
ぴったりアンソニーに寄り添っている。

「アンソニー大好き」「アンソニーかっこいい」だって。
あんなに惹いてなかったのに。

一体どうやったのこれと、
尋ねる皇子に対してアンソニー、
「1度、彼女の心を壊してから再構築しただけだよ」と一言。

そんなこと可能なのか。

その方法は次回、第297夜、明らかとなる。