新宿西口のとある居酒屋。ここは皇子も時々利用する店だ。
値段はそこまで高くない大衆的な居酒屋なのだが、非常に使いやすい。
まず、新宿駅からほど近く交通の便が非常に良い。
なおかつその店のオーナーも友人のため、わがままも聞いてもらえて、仲間を集めて大勢で飲むときにはかなりメリットが多いのだ。
その日は、皇子と皇子12神のイーグル、デュークの男子3名、女子2人で飲んでいたのだが、その噂を聞きつけて、戦士たちが集まってきた。
皇子が飲んでいると、女子は全く顔を出さないが、男子はなぜか集まってくれる。
そして皇子のまわりの男子は女性との接点がとても多いため、一緒に飲んでいた女子ごと移動してくるのですぐに大人数となる。そのため女子も期せずして皇子と飲むこととなってしまうのだ。
その中に、エロスな女子二人組がいた。
一人は、浅黒い肌にミニの白いワンピースが映えるアサカ。ウェーブのかかった茶髪ロングが、なにやらいけそうな感じを嫌でも醸し出す。
もう一人の女子は、大人の色気のある雰囲気がエロスなリコ。その日はさらにギリギリのショートパンツを履いてくるという暴挙で現れた。
彼女たちはもともと仲がよく、二人でも一緒に飲んだりする間柄らしい。
集ったメンバーは結果、女子7名、男子10名。立派な大所帯だ。皆で杯を重ね、日付が回る頃には全員がきちんと酔っ払う。他のお客様も皆帰ってしまったので多少騒いでもOKとなり、場はますます盛り上がる。
そしてアサカはハイボール片手に、ずっと皇子のそばにいて皇子の体にくっついている。
「私、筋肉ある人好きなんだよねー」と言いながら。
ずっと皇子のそばにいる。アサカがトイレから戻ってきても皇子の隣に座る。
むう、これを「確」だと言わずに何が確なのか。
皇子は、この後の展開を予測し、気を良くする。
だが、いつもここからが本当の勝負だ。
普通ならこのままの流れでいけるのだろう。ただ皇子は常に人生ハードモード。
ここから1ミリでもコースを外れた動きをした場合、手痛いしっぺがえしが全力で返ってくる。
焦るでもなく、でも他の男子にスキを奪われないよう、余裕を持った態度で構え、アサカに接する。
そっと「この店終わったら、二人でどっか飲みに行こうよ」との打診にアサカは回りを気にしながら嬉しそうにうなずく。
これ、行けるやつやん。
そして時計は午前2時。
さすがに歳を重ねた男たちには疲れの色がみえる。ただこういうときに誰かが「よし、今日は帰るか!」と一言を発さない限り、飲みの辞め時を失い、ついつい始発を迎えてしまうというリスクをはらんでいるものだ。
いままで皇子もそれで痛い目を見てきた。
特に今日のように、一緒に帰れそうな女子がいるときに楽しさという名の惰性で朝を迎えてしまうと、それまでエロく上気していた女子もびっくりするスピードでシラフに戻る。
朝の陽光は、女子の心を乾かす物理的効果があるらしい。
というわけで皇子が発声する。
「よし、今日は帰るか」
その言葉を待ってましたとばかり、だらだらと飲み続けていたクリーチャーたちが立ち上がる。
皇子も隙を見て、アサカを連れてエレベーターに向かい、颯爽と乗り込み1階のボタンを押す。
ここまではよし。
あとはスムーズな誘導のみだ。
居酒屋からタクシーが通るメイン通りまでは100m程度。この距離なら、女子に迷いが生じる可能性もまだ低い。だがまだ気を抜けない。
道すがらアサカにはとりとめのない話を振る。ここで無言で移動してしまうと女子に良からぬ思いが持ち上がってきてしまう。
「え、わたしなんかチャラくない?ほんとにいいのかな、これで」という理性だ。
だから皇子はその気持の芽が芽吹かないように、相手の思考をこちらからの話で満たす。
こういうときの100mは、体感300m位に感じる。
どうにか大通りに出て、タイミングよく現れたタクシーに手を挙げる。
その刹那
「え、どこ行くの?うちだったら行かないよ」とアサカ。
え?悟るの早くない?
タクシーにとりあえず乗ってから自宅方面に向かおうとしていたのは確かだけど、明確にうちに行こうとはまだ言ってない。
「わたし今日は帰るよー、明日も早いし」
アサカは止めたタクシーに一人で乗り込み、運転手さん、大丈夫です閉めてもらってと、言いながらさっさと行ってしまった。
電光石火。
皇子の反応スピードを遥かに超えるアサカのスピード。
皇子も対局選手権では多少の手練ではあると自負しているが、彼女はまさにオリンピックレベル。
繰り出す手業が全く見えなかった。
一人新宿の夜に残され、その場で7秒ほど呆然とした皇子だったが、こういう状況から再度正気を取り戻すのは慣れている。悲しみを背負いながら次に来たタクシーに手を上げ、自宅への帰路をとる。
とここで終わればいつもの話。
後日談がある。
その飲み会で一緒に飲んでいた男子、アキトから翌日の昼頃、電話が。
珍しいな。アキトとはLINEを通じての連絡ばかりで電話などはほぼない。
「皇子、昨日大変だったよ」興奮気味で話す。
「どうしたアキト」
「おれ、あのあとリコ連れて帰ったんだけど」
え、リコを?まじでいいな。
「リコが3Pしたいといい出して、アサカを呼んだらアサカもうちに来て」
え。
「で、そのまま3P。女子の方から言ってくるの初めてだったからめちゃ興奮したよ」
「で結局ふたりともさっきまでうちにいたから朝からおかわり3Pかましといた!」
「そういえば皇子、昨日あの後どうした?気がついたら店にいなかったけど」
正解はそっちだったか。
もしかしたら皇子がリコを連れて帰っていれば、皇子がその状況を享受できたのかもしれない。
嗚呼。
いやこれ以上言うまい。
ただ
「わたし今日は帰るよー、明日も早いし」
アサカの最後のこの言葉。この中には一文字の真実もなかったということだけは事実だ。
山頭火の唄を思い出す。
ー 分け入っても分け入っても青い山 ー
皇子はどれだけ百日行の行脚を続けても、深き山のさらに奥に踏み入るが如く。
だが、いずれ至り来るはずの稜線から山頂を目指して。
総評
まじでいいなアキト
エロス ★★★★★★★★★
難易度 ★★★☆☆
なごみ度 ★★☆☆☆
モテ度 ☆☆☆☆☆