カラ回り 第2夜

その男、カラ回りにつき

そんな映画が昔ヒットしていた気がする。

カラ回っても、カラ回っても立ち上がる。
この日記はそんな私、皇子の邂逅録だ。

挫けるという言葉を知らない恋愛ターミネーター、
皇子の人生の軌跡を肴に
今日も諸兄には
ブランデーでも傾けていただければ、それはそれで本望である。

某月某日 初夏
時間は夕刻を少し回った頃。
夕暮れに照らされた空には雲ひとつない。

皇子の心もその空と同じく晴れ渡っていた。

なぜなら今日は久しぶりに女子とのアポイントだからだ。

場所は東京。
渋谷の道玄坂を登り、途中の路地を少し入ったところにあるイタリアン。
店の選定も念入りに行った。

皇子には
女子との関係性を常に相談できる、メンターと呼べる愛の伝道師が複数存在する。

彼らは全員、女性経験100人超えの猛者共だ。
中には1000人を超えている超人たちもいる。
(ちなみにこの日記では女性経験を重ねることを「対局する」と表現するので覚えていただきたい)

彼らは職業で女子との対局を行う者共ではない。
経営者だったりサラリーマンだったり、至って普通の仕事。
そんな皇子12神のひとり、マークから今日の店は教えてもらった。

マークは都内のコンサルに務めるサラリーマン。
俳優の伊勢谷友介に似たナイスガイだ。

マークは常に言う。
「女子とは必ず自分のホームで戦うこと」

マークは渋谷に住む。だから彼のアポは常に渋谷だ。

「皇子もちゃんとホーム持たなきゃ」
だから皇子も自宅にほど近い渋谷をホームに定めた。

渋谷の道玄坂を上ったあたりには幾多の飲食店がひしめき合っている。
マークのおすすめは坂を登りきるか登りきらないかの場所にある店。

女子の思考的に
店が駅に近すぎると、出たあとに電車でこのまま帰ろうかな、という意識が働く。
逆に店から遠く渋谷のようにホテル街に近すぎると、警戒心が働く。

その調度中間の場所を選べと言うことなのだ。

さらには道玄坂を登ると、平坦な道に比べわずかながら体力を消耗し
適度に体の水分が失われ、
店に入ったあとの、一杯目のアルコールの吸収率があがるという科学的根拠も存在する。

話を戻そう。
皇子は数週間前に知り合った女子、ナツミとその日渋谷で
彼女の仕事が終わる午後8時頃に待ち合わせ、
そのまま道玄坂を二人で少し上り
マークおすすめの店に入った。

会うまでに幾多重ねたメールでのナツミからの食付きは上々。

皇子12神の一人、デュークから教わった「メール和み術」を駆使すれば
女子の心を掴むことは、いとも容易い。

決して下心を感じさせず、
かといって興味がない素振りでもなく。
まるで寄せては返す波のよう。

今回のナツミは、皇子の男友人から「これは鉄板」という触れ込みで
紹介された女子。
アポイントメントまでの苦労はさほどではなかった。

最初の一杯は彼女に選ばせ、二杯目からはワインのボトルを間髪入れずに注文する。

この時、気をつけるべきなのがワインの単価だ。

店で一番安いワインで構わない。
赤か白はどちらでもいい。
ここで見栄を張って高いワインを頼むのはまだまだ二流だと教わった。

「女子はお金をかければかけるほど対局できなくなるよ」

12神から金言。

皇子も、いままで女子と飲んで
帰りのタクシー代を出してしまったことも多々あるが
そういう女性に限って、再度皇子のもとには遡上してこないことを身を持って知っている。

迷うことなく一番安いワインを注文。

2800円。

楽しい会話は続く。
気づくともう1本目が空いている。
次も同じワイン。
とは言いながら最近のワインは安くても十分美味しい。

仕事の話から恋愛話まで。
スムーズに会話は流れる。

1時間ほど時は経過し、
試しに2軒目はホテルでの飲み直しを打診するもすんなりOK。

え、ほんとに?
やはり鉄板嬢はほんとに鉄板なんだろう。

そのイタリアンから道玄坂上のホテル街まで歩いて5分。

皇子は勝利目前に、グラスに少し残った美酒を喉に流し込んだ。

そしてそろそろ店を出る旨、打診。

二人、手をつないで通りを渡る。
ホテルがひしめくエリアに入った途端、あたりは派手なネオンで淫靡な雰囲気に満ち溢れている。
空室の表示が輝く一つを選び、すんなり入場。

ここまで順調だと逆に怖くなる。
でも皇子、今日、幸せになります。

でも
どこでなにが間違ったのか。

フロントで鍵を受け取り
エレベータで3階、304号室に吸い込まれるように入室。

そこで女子が靴を脱ぎながら一言。

「あたし、やらないからね」

嗚呼
もし世が世ならこれは万死に値する一言だ。
江戸時代なら市中引き回しの上、
獄門を申し付けられたことだろう。

あんなに酔っていていいムードで入場したのに。

それからの彼女は輝いていた。
こちらがどんな攻撃を繰りだそうと

まるで熟練のマタドールの如くひらりひらりと交わす。
皇子はそんな彼女に魅了された。

わけはない。

最後は
私もう帰ると言い残し部屋をあとにする女子。
そして一人残される皇子。


フラフラとベッドから立ち上がり、
ホテルに備え付けの冷蔵庫から取り出したチューハイを飲みながら思い出した。

「女子と対局するなら『ハチの一刺し』を常に意識すべし」

女子に対するときは一ミリも気を抜いてはならず。
居酒屋でもホテルでも一切ギラつかない。

ただここぞと思った時だけアクションを起こす。


それまでイヤラシイ雰囲気もおくびも出さず
友達の様に振る舞う。

今回の敗因はそこかもしれない。
連れてくまですこしベタベタしてしまったからな。

ラブホのベッドは一人で寝るにはちと広い。

2つ並んだ枕を
それぞれ涙で濡らした夜だった。

総評
どう考えても鉄板だった。
店アプローチは成功、
だがホテルまでの動きと、
現地でのイメージ作りが失敗といったところか。

本日の対局
結果     カラ回り
エロス    ★★★★★
難易度    ★☆☆☆☆
なごみ度   ★★★☆☆
モテ度    ☆☆☆☆☆